「子供を1人成人させるために必要な養育費は約2,700万円」
「余裕のある夫婦2人の老後資金は約3,200万円」
このような数字を、内閣府をはじめさまざまな機関や民間企業が出しています。
普段は意識することが少ないですが、生きるために必要な金額を目にすると不安になりませんか?
今、20代のうちから資産形成をすることの重要性について金融庁も発信するほどに資産を自分で作る意識が大切になっています。
40代や50代からでも遅すぎるということはありません。
なんとなく貯金している、というひとは資産形成について考えてみませんか。
40代は資産形成について考える絶好のタイミング
「年金に頼るだけでは、老後の生活が難しい」
このような認識が広がっている現在における、40代から資産形成をすることについて考えてみましょう。
2020年代の30代〜50代の世代は、年金だけでは生活できる世代から生活できない世代へのちょうど過渡期にあたる年齢で、資産形成を自分で行うということを若いうちに教えられていない人が多い世代です。
誰でも「安心して暮らせる資金が十分にあったらなあ」と感じているのではないでしょうか。
円安や戦争などで揺れている現代、将来の生活に不安がない人は少ないと思います。
「安心して暮らせる十分な資金」はいくらくらいでしょうか?
もちろん、答えは人それぞれ異なります。
記事の冒頭で「余裕のある生活に必要な資産は約3,200万円」と書きましたが、これは一例であり、ひと月の生活費や趣味にかかるお金、教育費、住居費などは家族構成や住んでいる地域によって大きく変わります。
自分に合った資産形成の目標金額を決めよう
独身や夫婦2人、家族3世代の家庭など、家族構成によって生活に必要な費用や今後用意する資金の目的は異なります。
自分に合う資産形成について1番よく分かるのは自分自身です。
そして自分自身のライフプランに合った目標金額を具体的に期限付きで決めることが資産形成を上手に行うポイントです。
「なんとなくお金を貯める」よりも、これからのライフプランに合わせて資産形成を考えるとお金の不安がなくなります。
特に、40歳という年齢はあと20年ほどで老後の生活が見えてくるころ。
60歳以降の生活について考え始める人も多くなります。
40代は、ライフステージを確認し、改めて自己資産について考え資産形成を始めるのに最適な時期といえます。
目標金額を無理のないように定め、貯蓄と投資の自分にあったバランスを見つけてみましょう。
資産形成のポイントは次の3つです。
- ライフプランを明確にする
- 目標金額を目的別にクリアにする
- 夫婦や家族でお金について話し合い、共有する
①ライフプランを明確にする
まとまった資産が必要なのはなぜでしょうか?
将来にわたって充実した生活をするため、ですよね。
人生には3大資金といわれる「教育、住宅、老後」以外にも大きな資金が必要なイベントがあります。
それは、個人ごとそれぞれ異なるので自分の人生について考えてオリジナルの資金計画を立てる必要があります。
世帯ごとにライフプラン表を作成することで人生を一覧表にして眺める事ができ資産形成の目安になる金額が明確になります。
実際、ファイナンシャルプランナーは作成したライフプラン表をもとに、相談にきた家族の資金計画を立てるのが基本です。
ライフプランとは、お金のことを考えるにあたって自分の人生を振り返り、また未来について考える人生設計のことです。
- 人生の長期的な計画100歳までの公私にわたるイベントや目標
- 総合的な計画(仕事・家族・自分の時間・家計・健康)を明確にする
- 人生観や価値観を反映させる
このような作業を行うことで、自分の理想的な人生を設計することができます。
②目標金額を目的別にクリアにする
自分の人生のイベントが明確になったら、次はイベントごとにかかる費用について考えてみましょう。
同時に、月々の生活費の推移を予想して年間必要金額を出してみます。
これからの人生で必要な資金の目安金額を目的別にクリアにすることでお金についての焦りや不安を軽くすることができます。
この金額は、あくまでも予想であってその通りにしなければならない、とプレッシャーに感じるようなものではありません。
ライフプランはあくまでも「計画」です。いつでも修正が可能です。
今、分かることを明確にしておくことで計画的に資産形成を進める事ができます。
ライフイベントを時間で分類することで、資産形成の方法について計画できます。
- 短期(1年以内)に必要なお金
- 中期(10年以内)に必要なお金
- 長期(10年超)に必要なお金
時間でわけることで、投資にまわすお金や、現金で置いておくお金が明確になります。
例えば、夫婦2人子1人の家庭の代表的な資金を例に挙げて考えてみましょう。
夫婦40代、住宅ローンあり、子(13)中学入学
イベント例 | ||
短期資金 | すぐ引き出せる状態にしておく | 中学生進学費用1年以内の家族旅行費 |
中期資金 | 積み立てを利用して計画的に月々貯める | 3年後の高校進学費用5年後の車購入費用 |
長期資金 | 運用商品を利用する | 60歳頃のリフォーム代子の結婚資金老後の船旅費用 |
長期資金を運用できる投資信託などで貯めるのは、10年超という遠い将来に使うお金は現在価値と将来価値に大きな差が出てくるからです。
投資信託の運用損益の上下を考えても、インフレが進行している場合は市場に資金を投資しておいた方がお金の価値が減らないのです。
もちろん、投機的なトレードをすることで資金をつくることはすすめられません。
長い目で必要になる資金は運用商品に投資しながらも、短期・中期資金は現金比率を高めておくことでバランスがとれて、安心して投資できます。
ライフプラン表は、自分でも簡単に作ることができます。ファイナンシャルプランナーに頼るのもいいですが、まずは自分でやってみましょう。
③家族や夫婦で資産形成について話す
ライフプラン表は、家族や生計を同じにしている人と共有することでより価値の高いものになります。
特に、夫婦ではライフステージごとにお金の話をすることが欠かせません。
結婚前には、負債の確認、キャリアプランや目標、家の賃貸・持ち家、子供の有無、老後の過ごし方、住む場所などを話し合っておくことで共通の目的を持ちやすくなります。
子供出産後の妻の働き方、家計の分担、子供が大きくなってきたり、夫婦だけの生活になったときなど収入の金額や支出の金額が大きく変わるタイミングで改めてライフプランや資産形成について話し合うことで実際の状況により合った家計の管理ができます。
また、40代以降になると両親の健康状態なども心配になりますよね。
親世代の相続の有無、両親の意向を知る機会を持つと安心です。
きっかけがないとなかなかお金の話をすることはないことが多いです。
家族1人が家計を管理していて任せている、という人も多いのではないでしょうか。
資産形成は、お金の金額の前に自分の人生の棚卸しの機会やコミュニケーションをとる機会になります。
人生を豊かにするための資産形成をするためには、自分や家族について知ることが大切です。お金の話と人間関係は切ってもきれない密接な関係があります。
「わたしの資産」を作ろう
40代から資産形成を改めて見直すときに、意識したいことがあります。
「自分名義の資産はいくらくらいあるのかな?」
夫婦間でのお金のやりとりは日常的なものが多いので曖昧になりますよね。
この記事を読んでいる「妻」の役割をしている人は、このようなことをしていませんか?
- 子育て期間中、パート収入をすべて生活費にまわして夫の収入から貯蓄をしている
- 夫の給与から生活費を出していて、余った分を妻の名義で貯金(へそくり)や投資に回している
これは、みんな「夫名義の金融資産」とみなされます。
「結婚前の資産はそれぞれもので、結婚後の資産は共有でしょ?」と、夫の収入も自分のものだと思っている主婦は多くいますが、夫の収入は基本的に夫のものになります。
そして、たとえ夫婦間であっても金融資産の移動は、贈与や生前贈与の対象になります。
いまから「わたしの資産」を意識して資産形成することがお金の心配を減らすことにつながります。
自分の資産があるメリット
夫婦やパートナー、または家族間で「個人名義の資産」を明らかにしておくとお金の心配がクリアになることがあります。
誰の資産かをはっきりさせる意識を持つと、お金に対する関心が出る。
「夫婦のお金」「家族のお金」、このような曖昧な感覚でいると、または管理は妻(夫)に任せておけばいいという責任感を誰ももたない状態になります。
また、「自分のお金」という意識は人間の損得勘定を刺激して興味関心を持つ効果があります。
「資産がある」ことが精神的な支えになる
自分の意思だけで動かせるお金があることは心理的によい効果をもたらします。
自分名義の資産として金額がはっきりしていると、「いざというときはこのお金を使って行動できる」という安心感がありますよね。
また、突然大黒柱であるパートナーが亡くなった場合、銀行口座は一時的に凍結してしまいます。すぐに使うお金が自分の名義で用意されているというのは緊急のときにもとても役に立ちます。
万が一、離婚する場合に安心
結婚後の収入は夫婦の共有財産、とはいわれているものの実際に2分の1ずつに夫婦の財産を円満に分割できる状況かどうかはその時にならないとわかりません。
日頃から、名義財産について意識していれば離婚の煩雑な手続きがすこしは軽くなります。
また、新しい生活を始めやすくなります。
お金が理由で身動きがとれない、ということを防ぐためにも自分名義の資産をしっかり構築
しておくことは重要になるのではないでしょうか。
贈与、相続で税金がかかる!知らないと損する贈与の知識
配偶者のお金をなんとなく移動させた金融資産は、相続時に税務調査が入ると「実際の所有者は配偶者」とみなされる名義預金として判断されて所得隠し、財産隠しと余分に税金を払わなければならない場合があります。
「年110万円以内の贈与ならいいのでしょ?」
実は、贈与というのは2人の間の合意によって行われる「契約」の一種です。
書面による贈与と書面がない贈与がありますが、本当に夫婦間で贈与の確認があったのかどうかを証拠に残す必要があるときは「贈与契約書」を交わさなければなりません。
税務署にしっかりした説明をするためには、贈与契約書を年1回夫婦間でも取り交わす、など証拠を残すことが必要になります。
税務調査では、もっと個人的な背景を詳細に調べられて「名義預金」なのかどうかを調査されることがあるようです。
夫婦間で贈与とみなされる場合については次のようなケースがあります。
- 生活費以外の110万円以上の贈与
- 高額なプレゼント
- 収入のない妻(夫)が契約者の生命保険契約
副業で自分のお金を確保
教育費や住宅ローンで自分名義の資産をつくる余裕がない、という人は本業以外に副業を持つことを考えてみましょう。
副業とひとことで言っても、自分の時間に合わせてさまざまな種類から選べます。
月1万円でも副業をして、貯蓄に回せると、20年では300万円以上の貯金にもなりえます。(3%複利運用で積み立てた場合)
資産形成のために、副業をして全額投資に回す、なんていうのも面白いですよね。
将来の資金になる、と考えるとモチベーションにもなります。
労働できる時間を少しでも副業に回しておくと、本業を引退したあとも、副業をするスキルや別の収入を増やすことが簡単になるかもしれません。
少しの金額でも、積み立てることで資産になるし、経験やスキル、意欲成長といった目に見えないけれど大きな価値のある資産も同時に育ちます。
健康で、スキルがあれば資産形成を続ける事もできますよね。
まとめ
40代は、資産形成について改めて振り返り新しい目標を立てて行動するのに最適な時期です。
家族との生活とともに老後資金について考えるのが具体的になり始める時期ではないでしょうか。ライフプランニングを活用し、家族と将来についての話をしながらお金の話を共有することによってよりリアルな資産形成の目標ができあがります。
リスクを考えつつ、短期、中長期的な資産形成について考え、具体的な目標ごとに金額を設定して貯蓄していくことで現金や投資をバランスよく行い、取り崩すことなく長期的な投資で資産形成をすることが容易になります。
また、改めてお金について考えたときに「誰の名義の資産なのか」という点を意識しておくとお金に関する心配がさらになくなるでしょう。
資産形成について考えてみませんか。