FXやCFD取引はリスクが高い投資商品として知られています。
それは、取引量にレバレッジが効くからです。
ハイレバレッジでの取引は、利益が大きくなる反面、損失も大きくなる可能性が高いので、取引量を慎重に決める必要があります。
この記事では、特に初心者は知っておきたい取引口座を破産させない適切な資金管理について紹介します。
高リスクな短期トレードで致命的な損失を出さないためには、資金管理が大切です。
破産確率をあらかじめ0%にする
破産確率とは、あなたが大損をしたためにトレードをやめる見込みを指す。単純だ。このため、破産リスクを避けることはリスク管理をするあなたの最優先事項でなければならない。破産しないで済めば、あなたは生き残ってトレーディングで成功する
「システムトレード基本と原則」より引用
ハイリスク取引を始める人は破産確率0%から始めよう
ハイリスク取引の目的は儲ける事ではなくまずは「生き残ること」が最初であるとトレードの本に書かれているのを何回か目にしました。
FXやCFD取引で、資金を大きく減らしてしまい、退場に追い込まれる、ということは日常茶飯事です。
自己資金以上の損失が出る可能性がある、ハイレバレッジのトレードをしたら特にその可能性は大きくなります。
海外FX会社では、自己資金以上の負債を負わないゼロカットシステムがありますが、入金したお金はほとんどなくなってしまいます。
そのため、FXトレードの退場率は9割以上ともいわれています。
「生き残る」確率は1割に満たないために、生き残ることがトレードの成功につながる、というのは説得力があるように思います。
生き残ると成功できる理由
- 長く相場にいるとチャンスがくる
- 経験でしか上がらないスキルがある
初心者が最初に学ぶべきことはトレードの方法ではなく、リスク管理のひとつである資金管理方法といえそうです。
破産確率0%の意味
退場する確率は「破産確率」とも呼ばれています。
破産確率は統計上の考え方だ。それはトレーダーに破産する確率ーー損失が大きく積み重なったせいで、トレードをやめる見込みーーーを教える。この累積損失は「破産ポイント」とも言われる。
「システムトレード基本と原則」より
破産確率は0%にしなければならない、と本に書いているのは「システムトレード基本と原則」の著者ブレント・ペンフォールドです。
破産確率と聞くと、自己資産がすべてなくなってしまうようなイメージを持ってしまいますが、あくまでも投資額として取引口座に入金した金額が「トレード不能」な水準まで減ってしまうことをいいます。
破産確率という言葉には厳密な定義はなく、口座資金がゼロになることだけをいうのではありません。
破産したという状態が、口座資金の50%なのか、75%なのか、それはそのトレーダーのリスク許容度で決まります。
破産確率はいくつがいいのでしょうか?
0%を目指しましょうと前述の本ではいいます。
0.0%の事ではありません。
トレードをする以上、必ず破産しない、と言い切ることができません。
ただ、1%未満の確率にすることができます。
実は、1%の可能性というのはトレードをしているとかなり大きな確率といえます。
特に、短期トレーダーにとって1%とは100回に1回起こる確率を指します。
0.5%でも200回に1回の確率です。
1%以上の破産確率がある状態でFXトレードを初心者が行う場合、時間の問題です。
いつか口座資金が破産ポイントに到達します。
0%でも、うまくいく保証はありません。
そして、この破産確率は売買ルールや成績が変わらないという前提だす不確実な数字であることは忘れてはいけません。
逆マーチンゲール法
「負けたときにはトレード枚数を減らし、勝ったときにはトレード枚数を増やすことができれば、適切な資金管理によってこれらの目標を達成できるだろう。」
「売買ルールではなく、適切な資金管理こそが生き残って大きな利益を得るための秘策なのだ。売買ルールの期待値がプラスなら、それはエッジになる。
良い資金管理があれば、さらにそれを強める。」
「システムトレード基本と原則」より
破産確率0%を達成するために重要な考え方に、逆マーチンゲール法があります。
マーチンゲール法とは、ギャンブルで使われる方法で「負けたら掛け金を大きくする」という方法です。
10%の損失を取り戻すには10%以上の利益が必要になる。
50%の損失を取り戻すには、100%の利益が必要になる。
このように、損失を出すと取り戻すには損失以上の利益が必要になるためマーチンゲール方法では、負けた分を超える大きな利益を狙って掛け金を増やしていきます。
この方法をFXトレードでやると、あっという間に口座が破綻します。
逆マーチンゲール法は、マーチンゲール法とは対照的に「負けたら掛け金を少なくする」方法です。
勝ちトレードが続くと利益が幾何級数的に増えますが、負けトレードが続くドローダウンの間は利益を増やせません。そして、損失分を取り戻すのに時間が余計にかかります。
損失を中々取り戻せないどころか、ドローダウンが続くことで感情的になりやめてしまいそうになりますが、負けるほど取引数量を少なくしていくので勝ちトレードが続く次のタイミングまで耐えることができます。
生き残る、というのは、このようにドローダウンに耐えられる、という意味でもあります。
バルサラの破産確率を使って取引ボリュームを決める
適切な資金管理の本質は非常に単純だ。トレーディングで損失が出たらポジションを減らし、利益が出たらポジションを増やすのだ
「システムトレード基本と原則」より
バルサラの破産確率
「破産確率」という言葉を最初に使ったのは、数学者のナウザー・バルサラであるといわれています。破産確率を求める理論を提唱しました。
決まったルールに基づいてトレードすることが前提となっています。
①トレードルールを決めます
②ルールの成績データを集めます
・勝率
・平均損益率
③次の表から破産確率を見つけます。
勝率 | ||||||||||
ペイオフレシオ | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 | 90 | 100 |
0.2 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 98.0 | 72.2 | 5.8 | 0 |
0.4 | 100 | 100 | 100 | 100 | 99.9 | 95.0 | 58.7 | 6.5 | 0 | 0 |
0.6 | 100 | 100 | 100 | 99.9 | 96.1 | 64.1 | 12.4 | 0.1 | 0 | 0 |
0.8 | 100 | 100 | 100 | 98.8 | 78.4 | 26.4 | 1.3 | 0 | 0 | 0 |
1.0 | 100 | 100 | 99.9 | 92.6 | 50.0 | 7.4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1.2 | 100 | 100 | 99.1 | 78.4 | 26.0 | 1.8 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1.4 | 100 | 100 | 96.4 | 59.5 | 11.9 | 0.4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1.6 | 100 | 99.9 | 90.4 | 41.2 | 5.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
1.8 | 100 | 99.7 | 81.1 | 26.8 | 2.2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2.0 | 100 | 99.1 | 69.6 | 16.8 | 0.9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2.2 | 100 | 97.7 | 57.6 | 10.3 | 0.4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2.4 | 100 | 95.2 | 46.4 | 6.3 | 0.2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2.6 | 100 | 91.5 | 36.6 | 3.9 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2.8 | 100 | 86.8 | 28.5 | 2.4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
3.0 | 100 | 81.2 | 22.0 | 1.5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
例えば、トレード成績が勝率52%、ペイオフレシオ1.2の場合、破産確率は26%です。
リスクが低いゾーンに入っていますが、このルールでは26%の確率で破産してしまいます。
確率論では9回連続して負ける事だって珍しくありません。
資金のうち、何回連続して負けてもいいのか?
また、実際のトレードには「1回あたりのトレードでどの程度の資金を投入するか?」という「1ユニットあたりの資金額」を決める必要があります。
連続して負ける可能性があることを考え、破産確率が0%になる取引量を決めて、ドローダウンに耐えうる資金計画を立てることが負けないトレードの基本的な考え方といえます。
「システムトレード」で提唱する破産確率
「システムトレード基本と原則」の第8章には、資金管理方法について詳しく説明されています。
また、トレードをする前に考えることとして著者の破産確率に対する考えが載っています。
ブレント・ペンフォールドの破産確率計算公式
破産確率=〔〈1-(W-L)〉÷〈1+(W-L)〉〕*
W=勝率L=敗率*=口座資金のユニット数
自分の運用ルールの勝率を使って破産確率を出すことができます。
例えば、60%の勝率(40%の敗率)がある運用ルールを30回トレードする場合
〔〈1-(0.6-0.4)〉÷〈1+(0.6-0.4)〉〕³⁰=0.00000347671…≒0.000347%
理論上、1000回に3回、つまり333回に1回の破産確率まで下げることができます。
*回の破産確率は次の通りです。(表にする)
1回で66%
2回で44%
10回で1.15%
11回で0.77%
17回で0.067%
20回で0.020%
30回で0.00034%
電卓で計算する方法
この公式は自分で電卓で簡単に計算する方法があります。
電卓の「k」機能を利用します。
上記の例を電卓で計算する場合
①カッコ内をあらかじめ計算するとスムーズです。
1-(0.6-0.4)=0.81+(0.6-0.4)=1.2
②次の通りに電卓に入力します。
0.8 ÷ 1.2 × × = 0.66666666…
と入力すると計算画面に「k」の表示が出ます。(機能がない電卓では計算できません)
③*回分「=」を押します
0.6666666…は全額を1回のトレードに使った場合の破産確率です。
「=」をトレード回数分押します。
何回押したかは表示されないので、自分で数えましょう。
トレード数量を計算しよう
- 売買ルールを決める
- テスタ―で30~50トレード行い、成績を出す
- 確率が1%未満になる1トレードあたりのロットを計算する
例えば、30回のテストトレードで次の成績が出たとします。
勝率 60% ペイオフレシオ 2.0 |
バルサラの破産確率 0
ペイフォールドの破産確率 0.00034%
どちらも破産確率は0%になりました。
資金は、30回トレードに連続して負けてもいいリスク額に設定します。
上記の成績なら、自己資産10万円なら3,333円のリスクで6,666円の利益を得られる確率が60%という状況です。
1トレードあたりの利益率は6%
1トレードあたりの損失率は3%です。
思っていたよりも、多いですか?
それとも、少ないですか?
10万円の自己資金で1回1万円の損失まで許容したら勝率60%でも100回に1回は破産する確率になります。
高リスクをとれるFXでも、これくらい慎重にトレードをしないと破産確率の方が大きくなってしまいます。
自分のリスク許容度を、破産確率を使って見直してみるのは成功への近道です。
まとめ
ハイリスクなFXやCFD取引には、資金管理が欠かせません。
資金管理は「トレードルール」「勝率」「利益と損失の比率」「何回トレードできる数量か」などの数字を組み合わせて自分にぴったりなトレード条件を決めることからはじまります。
なんとなく買ってみよう、売ってみよう、ではそのうち取引口座は破産してしまいます。
破産確率0%にできる、ということは自分のトレード方針がしっかり定まっているという証拠にもなります。トレードを始める前に、破産確率を計算してみましょう。