「やる気スイッチ♪ きみのはどこにあるんだろ~♪」というCMソングを聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。(やる気スイッチの歌と検索すると聞けます。)
耳に残る学習塾のCMソングですが「やる気スイッチ」って本当にあると思いますか?
実は、脳の中に「やる気スイッチ」があることがわかっています。
「側坐核」という名前がついた脳の領域は、やる気を司るホルモンを分泌しています。
やる気スイッチを自在に押せたらいいですよね。
脳の仕組みと、やる気を出す方法を紹介します。
やる気スイッチってほんとうにあるの?
「ダラダラしている時間から机に向かうまでの切り替えに2時間かかる」
「動き出すのが億劫で結局1日を無駄にしてしまった」
こんなことが続くと自己嫌悪に陥って、さらにまたダラダラしてしまう・・・悪循環にはまりなかなか抜け出せないことがあります。
やる気を出して、さっさと仕事にとりかかれたらいいのに、と思ったことはありませんか?
やる気スイッチって本当にあるのでしょうか。
やる気スイッチは脳にありました
人間の「やる気スイッチ」は脳の中に本当に存在するようです。
「側坐核」という脳のちょうど真ん中にある、無意識を司る部位がやる気を起こす「スイッチ」だといいます。
側坐核に刺激が伝わることで気分が高揚してやる気が出るホルモンである「活性化ドーパミン」が分泌されます。
残念なことに、無意識ゾーンにある「やる気スイッチ」を自分の意思でオン/オフの切り替えはできないといいます。
心臓が自分の意思で動かしたり、止めたりできないのと同じです。
やる気を出したり、出さなかったりすることは意識的にコントロールできない仕組みになっています。
脳機能を健康に保つことがやる気につながる
ここまで、当たり前に「やる気」という言葉を使ってきましたが、そもそもやる気とはなんでしょうか?
やる気
広辞苑第六版より
「物事を積極的に進めようとする気持」
意欲やモチベーションとも呼ばれている気持ちのことをいいます。
人間が行動しようとする動機づけになる気持ちのことを「やる気」と表現しています。
脳の無意識ゾーンにやる気を司る部位があるので「やる気」は人間の生きる意欲そのものだと考えることもできます。
原始的な時代の人間であれば、
「食べものをさがそう!」
「寒さをしのげる場所をつくろう!」
と、生存することそのものへの意欲をかき立てられたのではないでしょうか。
本能的に生存に必要な意欲だといえます。
現代では、やる気が出ない状態が慢性的に続くと「うつ抑状態」になり鬱病を発症する可能性が高いといわれています。
鬱病は「心の風邪」ともいわれ、脳の異常が原因であることが分かってきています。
やる気が出る状態をキープして毎日元気に過ごすためには、脳の健康が大切なようです。
脳を休めて健康に過ごすには、質のいい睡眠や運動習慣が有効です。
やる気は、単に「気持ちの問題」ではないことがわかりました。
心身の健康とやる気は直結しています。
疲れすぎてやる気が出ない人は、やる気を出そう!と頑張るよりもまずは休養が必要かもしれません。
やる気を出す方法3選
「やる気」は、人間が「行動しよう!」という気持ちになる興奮系ホルモンを分泌することで湧き上がる本能的な脳の機能であることがわかりました。
やる気を起こすのは脳の無意識ゾーンでのはたらきなので、わたしたちが意識的にコントロールできません。
それでもやっぱり「やる気スイッチを自在に操れたらいいなあ」と誰でも思うのではないでしょうか。
直接的にスイッチをオン/オフすることはできませんが、間接的にやる気が出る状態を作ることができます。
その方法は、「側坐核」の周辺にある意識ゾーンにある部位を刺激することです。
脳の特定の部位が刺激されることによって、その刺激が「側坐核」に伝わり、やる気物質である活性化ドーパミンが分泌されます。
身体を動かす
脳にある「運動野」を刺激するのが最も簡単です。
身体を動かすことで運動野が刺激されて、やる気が出てきます。
やる気が出るのを待ってから行動するのではなく、
やるからやる気が出るのです。
まず、行動することでやる気物質が分泌されます。
そして、行動を続けることで「作業興奮」というますますやる気になるモードに入ります。
この仕組みを知って「やる気はないけど、とにかく始める」と、行動することでやる気になります。
掃除したくない、と思いながら掃除を始めたら気分が乗って、大掃除をはじめてしまった。ということはないでしょうか。
これは「作業興奮」の一例です。
新しい経験をする
新しい経験は「海馬」という脳の部位を刺激して、その刺激がやる気につながります。
いつもと違う道を歩く、書くペンの色を変える、など小さな変化も新しい経験になります。
一方、脳には「馴化(じゅんか)」という現象があります。
分かりやすい言葉でいえば「3日ぼうず」です。
脳は刺激されることで活性化するので新しいことが大好きです。
新しいことはすぐに「慣れたもの」に変化していきます。
どんなに目新しいと思っていたゲームも3日もプレイすれば慣れ親しんだゲームに変わっていきます。
慣れ親しんだものには刺激が少ないので飽きていきます。
そのため、やる気が活性化されにくくなります。
これは悪いことではありません。
いつまでも刺激が強い状態が続くのは脳に負担になります。
また、「大変だ」「辛い」と思うようなことにも馴化は作用します。
新入社員だった頃の仕事が大変だったけれど、いつの間にか当たり前にできるようになっている、という現象も馴化のひとつです。
経験が積み重なることで、慣れていく脳の性質のひとつです。
ご褒美を用意する
「報酬系」という脳の神経回路があります。
「ごほうび」があると脳から「気持ちいい」「うれしい」といった快を感じる脳内物質が分泌される仕組みがあります。
「ごほうびが欲しいな」という気持ちがやる気になります。
テグメンタ(腹側被蓋野(ふくそくひがいや) 【ventral tegmentum】というドーパミン神経回路が側坐核を刺激します。
報酬系は、脳内でも強烈な刺激です。
ドラッグなどで興奮する神経回路も報酬系です。
人間の快楽を司る部位なので、効き目が強いです。
在宅ワークでやる気を出す方法
上で紹介した「身体を動かす」「新しい経験をする」「ご褒美を用意する」というやる気を刺激する仕組みを在宅ワークに応用した方法を紹介します。
タスクを小さくする
最初に紹介するのは、5分でできるタスクを用意しておくことです。
やるからやる気が出る
という仕組みを利用して、少しだけ作業に取り組む、という小さなステップを用意することでやる気が刺激され、仕事に集中しやすくなります。
5分の作業で「作業興奮」に作用するのと同時に、5分でできる小さなゴールを達成できると報酬系が作用して気分がよくなります。
タイマーを用意して、5分を測って行動するのをおすすめします。
ハードルの低いタスクを決めるときに参考になった本はこちらです。
「小さな習慣」
調子が悪くても達成できるような簡単なタスクを用意しておくと、やる気スイッチをオンにする行動になります。
作業する場所を定期的に変える
定期的にカフェで作業することで気分転換をします。
同じ作業でも、いつもと違う場所で作業すると「新しい経験」として脳の海馬が刺激されます。
スタバでパソコンを開いて仕事をしている人は、カフェの雰囲気で気分転換をしているのでしょう。
おすすめの作業場所は、早朝のファミレスです。
人が少なく、モーニングが楽しめます。
ドリンクバーがあるところでは、豆挽きコーヒーや水、ハーブティなどいろんな種類のドリンクが楽しめることも脳の良い刺激になるのではないでしょうか。
紙に書き出す
パソコン作業中に仕事が進まないときは、紙に手書きで書くことで考えをまとめましょう。
手書きは、手を動かすことで脳の運動野を刺激し、書く動作を続けることで作業興奮を起こします。
ペンの色を変えたり、色を塗るのも「新しい経験」として脳の刺激する効果があります。
飽きることへの対策と準備をしておく
「3日ぼうず」「飽きる」は必ずくるもの、と思って対策と準備をしておくと安心して作業できます。
「やる気がなくなった」と感じても、これが脳の正常なはたらきであることを知っていれば、悩むことはありません。
散歩に行ったり、行きたいカフェをリストにしておいたり、作業を細かいタスクにしておく、などあらかじめ決めておきましょう。
自分とうまく折り合いをつけてやる気スイッチをつけたり、消したりしていきたいですね。
まとめ
「やる気」は、脳にある「側坐核」という興奮系ホルモンを分泌する部位が刺激されることによって起きる気持ちだとわかりました。
この側坐核のことを「やる気スイッチ」ということもあります。
工夫しても、やる気を出す気があっても、行動できないときはありますよね。
無意識ゾーンにあるやる気スイッチは、自分の意識でコントロールできません。
また、疲れているときは、無理せずに脳の疲れを癒す日と割り切って休むことも脳には必要です。
副業は、長い時間続けていくことで成果がでることも多いですよね。
時にはやる気を出して頑張り、時には休むと自分のペースに合わせてやっていきましょう。
【参考資料】
「やる気脳の作り方~脳のしくみと「やる気」アップ術~」日本図書センター・作
池谷裕二 監修 オゼキイサム 絵