「嫌われる勇気」や「20歳の自分に受けさせたい文章講義」の著者であるライターの古賀史健さんが中学生に向けて書いた1冊を紹介します。
「日記を書くこと」を中心に、文章を書くことの面白さや書き方のコツを教えてくれる物語です。
海の世界の中学校を舞台にしたファンタジーですが、大人が読んでもわかりやすく、文章を書くときの視点や表現方法を広げるヒントが数多く書かれています。
Webライターや副業で書くこと、副業をやりたいけれど何をやっていいかわからない人も本書を読んで日記を書くことで、表現力が身についたり、書く習慣ができるでしょう。
イラストが美しく、ぜひ紙の書籍で手元に持ちたいおすすめの1冊です。
「さみしい夜にはペンを持て」は、大人も楽しめる日記のすすめ
中学生のタコジローの成長を通して、日記を書いて自分を知る楽しさを知る
「さみしい夜にはペンを持て」という本を紹介します。
さみしい夜にはペンを持て
著者:古賀 史健
出版日:2023年7月18日
出版社:ポプラ社

6章からなるストーリーで、日記を書くコツや日記を通じて自分を知る楽しさを教えてくれます。
主な登場人物
- タコジロー:主人公
- ヤドカリのおじさん:日記の書き方を教えてくれるおじさん
- イカリくん:主人公のおさななじみ
- 学校のクラスメート
- タコジローの両親
あらすじ
タコジローは、自分がタコであることが嫌いで、学校でいじめられることに悩んでいるおとなしい中学生。学校から逃げ出したくなったある日、公園でヤドカリのおじさんに出会い、日記の書き方や考え方を教えてもらうことからタコジローは日記を書き始める。
日記の書き方をおじさんから学び、書くことを学ぶことで自分を知るプロセスで、友人との関係を見直していく。
目次
1章「思う」と「考える」はなにが違う?
2章自分だけのダンジョンを冒険するために
3章きみの日記にも読者がいる
4章冒険の剣と、冒険の地図
5章ぼくたちが書く、ほんとうの理由
6章「書くもの」だった日記が「読むもの」になる日
著者 古賀史健さんのプロフィール
古賀史健
ライター。株式会社バトンズ代表。
1973年福岡県生まれ。
1998年、出版社勤務を経て独立。
編著書の累計は1600万部を超える、日本のライターとして最も有名な一人です。
ビジネス書ライターの地位向上に大きく寄与したとして「ビジネス書大賞・審査員特別賞」の受賞歴もあります。
一番知られている著書は、『嫌われる勇気』(岸見一郎共著)ではないでしょうか。
世界40以上の国と地域、言語で翻訳され世界的ベストセラーとなったアドラー心理学を日本に広げた1冊です。
文章に関する著書には、『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』『20歳の自分に受けさせたい文章講義』があります。
どちらも、難しい言葉を使わずに、文章を書く方法を教えてくれる本で、Webライターや文章を書く仕事を副業にしたい人は1度読んでおきたい必読書といえます。
海の世界のファンタジーだからこそ伝わる「日記を書くこと」の面白さ
プロのライターである古賀史健さんが、中学生に向けて「書くこと」を伝えようとして作られたのが今回紹介している「さみしい夜にはペンを持て」です。
本書は、発売前に重版が決定するなど大きな注目を浴びています。
本書のテーマのひとつに「日記を書くこと」が中心に置かれているため「ほぼ日手帳」の糸井重里さんとの対談も行われています。
古賀史健×糸井重里「きみのもやもやを、ぜんぶ書いてしまえば。」 – ほぼ日刊イトイ新聞
ほぼ日手帳は、1日1ページのスペースがある手帳で日本や海外で根強い人気がある手帳です。
ほぼ日手帳では、2019年から1ページに5年分の日記が書ける5年日記も発売しています。
でも、ぼくもこの本を書いている途中にほぼ日手帳や5年手帳は頭にありました。
(中略)
ほぼ日手帳を使っている人たちが日記的なものを継続している感じは、ぼくの憧れでもあるんですよ。
たぶん、ほぼ日手帳をずっと使っている人なら、この本の内容にも共感していただけると思うんです。
(7)日記を書いた自分が読者になる。より
上記の対談でも話に出ていますが、本書を読んで、日記や5年日記をつけてみようと思う人は増えるのではないかな、と思いました。
また、本書はカラフルで美しい色使いの表紙が目をひきます。
絵本の編集も手がける編集者と一緒に作ったという本書は、イラストからもストーリーが楽しめます。
イラストレーターならの さんがイラストを担当しており、ほとんどのページにイラストがあります。
ページの縁取りやカラーがカラフルになっていて、物語を盛り上げています。
中学生に向けて書かれたという本書ですが、大人も手元に持ちたくなるような内容と見た目です。
「さみしい夜にはペンを持て」が大人にも楽しめる理由は絵の美しさと日記の楽しさ
本書は、児童向けにも書かれているが、大人が読んでも内容が役に立つ実践的な日記の書き方を教えてくれる本だという両方の印象を持ちました。
- 絵でストーリーを楽しむ
- 日記の書き方、楽しみ方を知る
絵でストーリーを楽しむ
本書「さみしい夜にはペンを持て」は、紙の書籍で手に入れたい1冊となっています。
その大きな理由は、本の装丁がとてもきれいだからです。

舞台となる海の底の世界が表紙全面を使って描かれています。
また、ラメ入りのタイトル枠や、ざらざらした手触りの表紙の紙質が本を持って読むことを楽しくしてくれます。
手に持ってうれしい本、というのは、五感が刺激され、読書という体験をより豊かにしてくれますね。
また、中身のイラストも紙芝居的な、映画的な見せ方が楽しめます。

見開きページを使って書かれたタイトルは、インパクトがあり、一気に海の世界に引き込まれるような不思議な気持ちになります。
話は、タコジローとやどかりの「おじさん」のやりとりを中心にすすみ、タコジローが学校で感じている悩みや友人とのやりとりを日記を通して自分を知り、友人を知り、受け入れていくファンタジー。
上記で紹介した糸井さんとの対談では、「海の世界の学校、という架空の舞台だからこそ書ける話がある」と古賀さんはいいます。
日記の書き方、楽しみ方を知る
絵やストーリーの楽しさだけでなく、ライター古賀さんの書くお話の中には、書くことへのヒントが満載です。
特に4章 「冒険の剣、冒険の地図」の内容に、魅力を感じました。
この章では、日記を書くときのコツと、日記を書く目的について教えてくれています。
冒険=日記を書くこと
- 冒険の武器:ボキャブラリー、スローモーションの表現力、
- 冒険の地図:似ているもの、から導き出すテーマ
- 冒険の目的:自分が進むべき道を示して、進むこと
日記を書く、というと「その日にあった出来事」を書き連ねていくだけ、という書き方をしていませんか?
本書では、日記=あのときの自分の気持ちを書く、ことが面白い日記のポイントであるといいます。
そして、気持ちを書こう!というだけで終わりません。
実際に、あのときの気持ちの思い出し方や、日記のテーマの決め方、日記を書く目的まで細かくわかりやすく説明してくれています。
「わたしにも日記が面白くかけそう」
読んだその日から日記を書いてみたくなる内容です。
ここで説明されている日記の書き方は、日記だけでなく、あらゆる文章に役に立つ内容だと感じました。
「いや、もう『すごい』としか言いようがないし、『きれい』のひと言だよ。そりゃ、イソギンチャクの色を説明したりとか、ゆらゆら揺れてる姿を説明したりとかはできるかもしれないけど、ぼくの気持ちは『すごい』『きれい』だよ。ほかにはなにも言えない気がするな」
「そういうときにはね、『これはなにに似ているか?』と考えてみよう。きっと『すごい』や『きれい』の底にある、ほんとうの気持ちが見えてくるよ」
「さみしい夜にはペンを持て」これはなにに似ているか? より
「すごい」
「かわいい」
「やばい」
ふと印象に残った出来事について、このような「ひと言の言葉」ですませることが1日に何回あるでしょうか。
文章を書くときは、この気持ちを広げていくことで自分のことばが書けるようになります。
Webライターやシナリオライター、動画を作りたい人など、文章で副業をはじめたい人には必須のスキルだといえます。
「さみしい夜にはペンを持て」には、書くために考える視点のヒントがあると感じました。
「さみしい夜にはペンを持て」を読んで日記を書くことをおすすめしたい人
この本は、物語として楽しむことができますが、役に立つ実用書の面もあります。
本書をおすすめしたい人は次のような人です。
- 副業をやりたいけれど、何をしたらいいかわからない人
- 自分の得意なことや好きなことを知りたい人
- 文章を書くことが下手だと思っている人
文章を書くことが下手だと思っている人
Webライターをやってみたいけど、文章が下手だからできない
文章を書くことに苦手意識を持っている人は、この本を読んで日記を書くことを楽しむことで文章を書く習慣ができるのではないでしょうか。
人に読んでもらうための文章は、うまく書く必要はありません。
何を伝えたいか、わかりやすくかいているか、が大切です。
まず、未来の自分が読む日記を自分に向けて書いてみましょう。
自分の得意なことや好きなことを知りたい人
継続して日記を書くことで、「自分の考えていること」や「自分が好きなこと、嫌いなこと」が明確になっていきます。
本書で書かれている「あのときの自分の気持ち」を残す日記の書き方は、より自分を知ることができる日記になります。
副業をやりたいけれど、何をしたらいいかわからない人
副業をやりたい気持ちがあるけれど、具体的なアイディアが出てこない
ことばにならない思いは「コトバミマン」という泡のようなクラゲとして本書に登場します。
日記を書くことは、やりたい気持ちを具体的に言葉にして、実現させていく力があります。
副業をやりたい気持ちをテーマに日記を書いていくことで、アイディアのヒントが生まれるかもしれません。
まとめ
「さみしい夜にはペンを持て」は、日本で最も有名なライターの一人である古賀史健さんが
中学生に向けて「書くこと」について伝えた1冊です。
中学生に向けて書かれたファンタジーですが、本書の内容は「日記を書く」というテーマで大人にも必要な文章を書くときのポイントがわかりやすい言葉で説明されています。
海の世界が舞台で、イラストがたくさん入った美しい絵本として物語が楽しめます。
Webライターや文章を書く副業をやっている人にとっては文章を書くヒントになるでしょう。
また、副業をやりたいけれど何をしたらいいかわからない、と迷う人は本書を読んで日記を書くことで自分を知り、やりたいことが見つかるきっかけになるかもしれません。