スレオニンは、人間の身体を構成するタンパク質に含まれるアミノ酸のひとつで、筋肉や内臓などを作るために欠かせません。
体内で合成できない栄養素なので、毎日の食事やサプリメントから摂取する必要がある必須アミノ酸と呼ばれています。
身体を作る材料であるとともに、胃腸の働きをサポートしたり、成長の促進や美容効果など積極的に摂取したい効果があります。
スレオニンとは
スレオニンは英語表記【threonine】を日本語に直したものであるため「トレオニン」と呼ばれることもあります。
スレオニンとは
スレオニンは人間の身体のタンパク質をつくる20種類のアミノ酸のうち、一番最後に発見されたアミノ酸です。
糖性アミノ酸に分類されるスレオニンは、体内で人間のエネルギー源となるグルコースを生成する材料になります。
活動に欠かせないエネルギーの補給として点滴や栄養補給剤など医薬品にも使用されています。
体内で合成できない必須アミノ酸と呼ばれる、毎日の食事で摂取する必要がある栄養素で、人間はもちろん動物にも重要な役割を果たしています。タンパク質の材料として身体を構成するほかに、成長の促進や胃腸機能のサポートをする特徴があります。
スレオニンは、動物性たんぱく質に多く含まれていますが、植物性たんぱく質にはあまり含まれていません。そのため、スレオニンは穀物に添加されて鶏などの家畜用飼料に幅広く利用されています。
ベジタリアンやビーガンなど動物性たんぱく質を控える生活をしている人は、サプリメントなどを利用して意識してスレオニンを摂取するとアミノ酸のバランスがよくなります。
スレオニンをはじめとした必須アミノ酸9種類は、全てをバランスよく摂取することで「アミノ酸スコア」がよくなり、全てのアミノ酸を効率よく体内で活用できます。
スレオニンは「新しい」アミノ酸
スレオニンが発見されたのは1935年。人間のたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中で一番最後に発見された比較的「新しい」アミノ酸です。
最初に発見されたアミノ酸はアルギニンで1806年のことだったので、130年遅れて発見されました。それまでに19種類のアミノ酸については存在が確認されていましたが、19種類のアミノ酸を与えて飼育した実験用のネズミの成長が悪く、他のたんぱく質を加えて育てると良く成長するようになったことから他にもアミノ酸が存在しているのではと考えたアメリカの学者によって発見されました。
必須アミノ酸9種類をバランスよく摂取しないとたんぱく質が合成できないことがよく分かる実験ですね。
植物性たんぱく質にはスレオニンが少ないことから家畜の飼料にスレオニンを添加するようになったのは1987年と最近のことです。豚や鶏の栄養価が大きく高まることに貢献している重要なアミノ酸です。
スレオニンの効果
スレオニンの主な働き
スレオニンの主な働きは次の通りです。
- 脂肪肝の予防効果
- 胃腸のサポート効果
- 成長の促進効果
- 美容効果
脂肪肝の予防効果
人間の身体に必要なエネルギーを生み出す働きをする肝臓は、食べ物から取り込んだ栄養を、いつでもエネルギーに変換できるように脂肪として肝臓に貯蔵しています。
使うエネルギーよりも多い脂肪を蓄えてしまうと「脂肪肝」という肝細胞の30%以上が中性脂肪になる状態になります。
脂肪肝になった肝臓は、細胞が固く変形してしまう肝硬変や動脈硬化など健康を害するリスクが高まった状態です。脂肪の多い食事やアルコールの過剰摂取が続くと脂肪肝になりやすくなります。
スレオニンは、肝臓に蓄積されている脂肪をエネルギーに変換しやすくする働きがあります。脂質代謝を促進することで、脂肪を身体を動かすエネルギーに使いやすくなり、脂肪肝を予防する効果が期待できます。
逆に、スレオニンが不足すると肝臓に脂肪が溜まりやすくなるのでスレオニンを中心にアミノ酸をバランスよく摂取することで健康な肝臓を維持できます。
肝臓が弱ると疲労感の原因にもなるため、元気に活動したい人はアミノ酸をしっかりとって内臓のケアを意識しましょう。
胃腸のサポート効果
「胃の調子が悪いな」と感じると集中力が落ちたり、何もやる気が起きないことはありませんか?
スレオニンには、胃酸の分泌バランスを整え、胃の炎症を予防する効果があります。
また、スレオニンは胃に加えて腸の健康を守る働きもしています。
胃や腸を細菌やウイルス、酸から守る役割を果たす粘膜はムチンというネバネバした物質でできていますが、ムチンの材料となるのがアミノ酸のスレオニンです。
腸にいるスレオニンは、消化された食べ物から栄養を吸収する絨毛(じゅうもう)の働きをサポートしています。スレオニンが絨毛を柔らかくし、活動が活発になる環境を整えているため食物の消化・吸収率が高まります。
腸は、免疫機能を司る重要な臓器であり、細菌やウィルスが体内に侵入するのを守るシステムを持っています。スレオニンは、この腸管免疫機能を働かせるために必要な栄養でもあります。免疫機能として働くリンパ球を増やす効果や、抗体を分泌する働きを促進しています。
「腸内環境」は、身体や脳の健康に大きく関係することが分かってきており近年大変注目をあびています。
スレオニンは、胃腸を守り健康を維持するために重要なアミノ酸であるといえますね。
成長の促進効果
スレオニンは、人間の身体を構成する20種類のアミノ酸のうちのひとつであると同時に新しい細胞を作る働きを活発にすることで筋肉や粘膜の成長を促す効果があります。
特に、粘膜を構成する糖たんぱく質の合成にスレオニンは重要な働きをします。
ムチンは、スレオニンが十分にある環境で産出量が増えるといいます。
スレオニンは、粘膜の他にも筋肉や他の身体の部位でたんぱく質の合成を促進することも分かっています。
美容効果
みずみずしい肌、ツヤのある髪の毛は、健康的で美しい印象を与えますよね。
皮膚や髪の毛の健康を維持し、若々しい印象を与えているのはたんぱく質です。
特に、たんぱく質の材料の一つであるスレオニンは、肌の潤いを保つ天然保湿成分(NMF)と呼ばれる成分の中にも含まれています。また肌のハリや潤いを支えるコラーゲンの材料としても欠かせません。
また、髪の毛が潤ってハリがあるのはケラチンというたんぱく質が豊富にある状態です。
髪の毛は99%がケラチンというたんぱく質でできており、スレオニンをはじめとした18種類のアミノ酸を材料としています。必須アミノ酸であるスレオニンなどが十分補給できていると丈夫な髪の毛になります。
ケラチンの合成には亜鉛が重要な働きをするので、アミノ酸に加えてミネラルも意識して摂取すると髪の毛の健康に役立ちます。
スレオニンが含まれる食品
鶏肉に多く含まれる
スレオニンは、主に動物性の食材に多く含まれています。
体内でスレオニンを合成することはできないので毎日の食事から十分な量を摂取する必要があります。特に、鶏肉にはスレオニンが豊富に含まれており手に入りやすい食材でもあるので日々のメニューに組み入れやすいでしょう。
スレオニンが多く含まれている食材は次の通りです。
100gあたりのスレオニン含有量(mg)
鶏むね肉 1,100mg
クロマグロ 1,100mg
鶏卵 640mg
豚ロース 1,100mg
パルメザンチーズ 1,700mg
WHO(世界保健機関)によると、スレオニンの1日に必要な目安量は大人の体重1キロあたり15mgといわれています。
体重60キロの人は、1日900mgのスレオニンが必要になります。
卵を2個食べれば不足することはありません。
ベジタリアンなど動物性タンパク質を避ける人は、サプリメントなどで補うことでアミノ酸スコアのバランスを整えることができます。
不足に注意しよう
スレオニンを食品から摂取する場合、過剰摂取しても問題ないといわれていますが、サプリメントなどで過剰に摂取した場合の副作用として胃腸障害や頭痛が報告されています。
一方で、スレオニンが体内で不足した場合は様々な健康リスクが生じます。
脂肪肝になりやすくなったり、たんぱく質の合成がうまくいかなくなり筋肉量の減少や髪の毛のトラブルの原因になります。また、胃腸の免疫機能をサポートする重要なアミノ酸であるため、免疫機能が低下する可能性があります。
まとめ
スレオニンは、毎日の食事から継続して摂取する必要がある必須アミノ酸です。
鶏肉などの動物性タンパク質に多く含まれており、身体のタンパク質合成を促し、免疫機能をサポートする重要な栄養素です。
また、皮膚や髪の毛、肝臓の健康を維持するために必要な成分であるため、十分とることで美しく健康で元気に活動できるでしょう。
サプリメントなどでアミノ酸スコアを意識した摂取を心がけると心身ともに健康を実感できそうです。